三谷建築設計事務所 富山県一級建築士事務所 住宅設計
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2009年 秋 滋賀のヴォーリズ建築を訪ねました。
きっかけは、夏に見学した『ウイリアム・メレル・ヴォーリズ展』。
優しく温かい雰囲気の建築にすっかり魅了され、是非 実際に見学したくなりました。
美しい秋の一日、琵琶湖畔の町を訪ねました。
2010年 1月11日 三谷光雄 + 三谷妙子





■近江八幡のヴォーリズ建築

24歳のウイリアム・メレル・ヴォーリズは、明治38年、滋賀の近江八幡に 英語教師・宣教師として来日しました。
当時の日本の衣食住すべてが、米国人青年にとっては相当なカルチャーショックで、日本の生活に馴染むまでは大変苦労しただろうと想像します。

彼は、一柳満喜子という良き伴侶に恵まれて家庭を持ち、帰化し、昭和39年に亡くなるまで、生涯この町で暮らしました。教育や社会福祉の活動と共に、建築設計に携わりました。個人住宅をはじめ、学校や公共施設など、町の中に彼が設計した建物がいくつもあり、現在も大切に使い続けられています。
旧市街を歩いて見学しました。


池田町洋風住宅。旧ウォーターハウス。

池田町洋風住宅。吉田邸。


池田町洋風住宅。吉田邸玄関ドア。


池田町洋風住宅。ダブルハウス。

旧八幡郵便局。


街中に建つヴォーリズ像。笑顔の先には、花束を捧げる少女の像が。





■ 旧 忠 田 邸 クラブハリエ日牟禮館 
滋賀県近江八幡市宮内町日牟禮ヴィレッジ TEL0748-33-3333


バウムクーヘンで有名なクラブハリエ(たねや)は、ヴォーリズ設計の 旧忠田邸を修復改修して、カフェ特別室としています。
私達はそのことを知らなかったので、最初、道路から塀越しに建物を見学して外観を見ました。その後、カフェでお茶と焼きたてのバウムクーヘンを楽しんでいた時、お店の方との何気ない会話でヴォーリズ建築を見学していることを話したら、思いがけず内部を見学させていただけることになりました!
(本当は、事前に予約をしないといけないらしいのですが、たまたま予約が入っていなかったので、見学させていただくことができました。ありがとうございました。)他の個人住宅は内部を見学できないため、中に入り空間を味わうことができたのは、とても嬉しかったです。

旧忠田邸は、どの部屋からも庭を眺めることができて、窓から明るい日差しが入ります。静かで気持ちのよい住宅でした。
アンティークな趣のインテリア。重厚な木の床、柱やドアにも味わいがあります。ヴォーリズ建築では手摺のデザインも大きな特徴ですが、手に馴染む、優雅な曲線が美しい手摺です。
階段の段差は小さく、上り下りしやすくなっています。玄関には靴紐を結ぶためのベンチがあり、あちらこちらに細やかな気配りがありました。


旧忠田邸 外観。

庇のデザイン。


暖炉のある部屋。


書斎。

シェフの会議室。


階段室。






■ ヴォーリズ記念館 旧 ヴォーリズ 邸  
滋賀県近江八幡市慈恩寺町元11 TEL 0748-32-2456


ヴォーリズ夫妻が住んでいた小さな家は、『ヴォーリズ記念館』として公開されています。

実際に使われていた家具、書籍、写真等の資料を見学しました。どれも飾り気のない質素な品で、それを大切に丁寧に扱っていた様子が窺えます。飾られていたアメリカ・コロラド州で撮影した少年時代の写真を見ると、当時のアメリカの人達の服装、髪型、街の景色が『大草原の小さな家』のインガルス一家のようです。「あぁ、そうか!そんな時代の人だったのか!」と、深く納得した私です。

日本全国で沢山の仕事をして、大規模な建築物も多く手掛けたヴォーリズを、私は単純に「すごいなぁ」と思っていましたが、この記念館で、ヴォーリズ夫妻は、信仰の教えを生涯守り、「生きている間に使うものは、すべて神様から借りている物」と考え、お金は最小限で必要以上はすべて寄付し、何も自分の名義にせず、大変つつましい生活ぶりであったと知りました。
その生き方に大変感銘を受け、ヴォーリズ建築から受ける温かく優しい雰囲気は、彼自身の人柄が反映されたものだと思いました。

 私達がゆっくり見学していると、記念館の受付のおじさんと旅行者が話しているのが聞こえました。
おじさんは、「近江八幡は小さな田舎の町やけど、ヴォーリズさんが来てくれはったお陰で、こんなに良い町になったんです。」と言っておられました。「こんなにも町の人々に愛され尊敬されつづけるなんて素晴らしいなぁ。」と、傍で聞いていた私達まで 幸せな気持ちになりました。


ヴォーリズ記念館。






■ 豊 郷 小 学 校 旧校舎  
滋賀県犬上郡豊郷町石畑375


以前、市民運動によって解体が取り止めになり、復元保存が決まったことで全国的に話題になりました。
現在は、耐震補強と大規模改修工事が済んで、町立図書館や子育て支援センター等として利用されている他、一般の人も見学できるよう公開されています。ヴォーリズ展で見た『ウサギとカメ』の階段手摺の飾りがとても可愛くて、ぜひ見てみたいと思いました。

来る者を、両手を広げて優しく迎え入れてくれるような建物です。正面玄関の棟を中心に左右対称に教室を配したシンプルなかたち。左右の端には、講堂と記念館があって、広々とした前庭に立つとこれらの建物に抱かれているような安心感があります。
内部の、長い長い廊下には、窓からの日差しがリズミカルな光の模様をつくり、大人でも、思わず向こうの端まで駆け出したい気持ちになります。(廊下は、走ってはいけません!) 教室の出入口は、引き戸ではなく、開きドアなのが珍しいと思いました。
ドアの軌跡が、黄色のペイントで丸く描いてあるのも面白いです。(衝突事故防止の為でしょうか。) もう学校としては使われていないけれど、今にも子供の声が聞こえてきそうです。自分も子供の頃は木造校舎で学んだことを、懐かしく思い出しました。

階段は3箇所あり、それぞれに『ウサギとカメの駆け競べ』のブロンズ像があります。想像していたよりも小さくて、より一層かわいい感じがしました。子供たちは、階段を上り下りする度に見たり触ったりして、「コツコツ努力することが大切」と、自然と学んだでしょうね。

資料室には、この学校の歴史や建設の経緯(同町出身の一人の近江商人の全額寄付で建設された)が詳しく紹介されています。最近は、「けいおん」というTVアニメで、この校舎が描かれているそうです。アニメファンらしい若い見学者も見かけました。アニメという物語の世界に、実在の建物が描かれていて、そこを実際に訪ねることが出来るなんて、ちょっと不思議で面白いです。









そのほか、大津市の堅田教会、高島町の今津教会、旧百三十三銀行今津支店、旧今津郵便局も見学しました。


堅田教会。

今津教会。


旧百三十三銀行今津支店。





■ かわらミュージアム  
滋賀県近江八幡市多賀町738の2 TEL0748-33-8567


ヴォーリズ建築ではありませんが、クラブハリエから少し歩いたところにある『かわらミュージアム』も見学しました。

地元の八幡瓦の魅力を紹介する小さなミュージアムです。展示室だけでなく、蔵のような建物外観、瓦を敷き詰めた小路、季節を感じる庭の木々など、周辺の景色を眺めながらのんびり歩きました。
八幡堀沿いの石畳の道は、「毎日、ここを歩きたい!」と思ったほどでした



瓦敷きの小道。模様が楽しいです。

織姫彦星の棟飾り。


運河沿いの静かな小道。


鴨の夫婦、お散歩中。




■Restaurant & Gallery 季 の 雲 (ときのくも) 
滋賀県長浜市八幡東町 211-1 TEL0749-68-6070
HPアドレス:http://www.tokinokumo.com/

去年、あるミュージアムショップで心惹かれて買った素敵なカレンダー。
それが、長浜にあるレストラン&ギャラリーのオリジナルと知って、この機会に訪ねてみることにしました。住宅街にある「季の雲」はコンクリート打ち放しのスタイリッシュな建物。
初めて行くお店なので、ちょっと緊張して入りましたが、スタッフの方達の優しい笑顔とスマートな対応で、居心地よく、楽しいランチタイムを過ごしました。食事の後にはギャラリーを覗き、心も満足。もちろん2010年のカレンダーも買いました。会話も弾んで、良い旅の思い出になりました。







◆琵琶湖をぐるっと回って、沢山の建物を見学しました。
どの建物も、すぐにヴォーリズだと分かります。修復されたものは当時の美しさが見事に蘇っていて感激し、また古いままの建物も大切に使われている様子が分かり、嬉しくなります。
時間を経ても、変わらずに愛される建築。「ヴォーリズさんに設計してもらったんだよ。」と、誇らしそうに語る町の人々にお会いして、とてもあたたかな気持ちになりました。私達もこんな仕事をしたいと改めて思いました。心に残る素晴らしい旅になりました。

◆タイトルのイラストは豊郷小学校の手摺飾りのウサギとカメをうつさせていただきました。