三谷建築設計事務所 富山県一級建築士事務所 住宅設計










全国の建築士会会員に発行している「建築士」という雑誌の2005年9月号に、三谷光雄の文章が掲載されました。
「住宅の耐震性と居住性」             
三谷建築設計事務所 三谷光雄

 阪神大震災から10年。さらに昨年の秋は、次々と上陸する大型台風に加え、新潟中越地震が発生して、日本各地は大きな被害に遭いました。これらがきっかけになり、私たち建築士は勿論、一般の人々の間にも、建物の安全性を重視する意識が一段と高まってきているようです。私自身、住宅設計の打ち合わせ時に、施主から「地震や台風に強い家にして下さい」と依頼されることが多くなりました。 一般的な木造住宅で、建物の耐震性能を上げる為には「耐力壁の量」「耐力壁の配置=バランス」「床や屋根の水平剛性」「軸組の接合部の強度」「基礎の構造形式」について充分に配慮することが必要です。  耐力壁について述べると、私は、木造の耐力壁は強度を上げて数を少なくするよりも、強度を低く抑えて数を多く配置したほうが効果があると考えています。

 一つの強固な壁に応力を集中させた場合、万一その壁が破壊されると、建物の倒壊に直接繋がる恐れがあります。また、その壁には大きな引き抜き力が働く為、接合部は金物に頼らざるを得なくなります。

 それに比べ、壁の強度が小さくても数多くバランス良く配置された場合、建物全体としての強度は充分に満たされ、且つ金物を使う量が少なくなります。これは「総持ち」という考え方です。「総持ち」の場合、1本の柱にかかる引き抜き力は小さくなります。その為、建物自身の重さと横架材の押さえ効果で、柱の浮き上がりを押さえることができます。金物に頼らなくても充分な強度が得られるのです。本来、伝統的な日本の建築は木と木を組み合わせた「仕口」で力を伝える工法が主でした。仕口接合は金物接合に比べ、粘り強さがあるのが特徴です。地震の際の変形は大きくなりますが、一気に建物が倒壊するという事態にはなり難いのです。また木摺り、貫、下り壁なども地震の際には耐力を発揮します。

 さて、住宅の場合、安全強固であるという機能も大切ですが、居住性が良いこともまた重要な要素です。施主の希望の多くは、「自然の光が差し込む明るい家にしたい」「家族が集まるリビングは大きな空間にしたい」等々。特に私の住む北陸は、長く暗い冬がある為、光を求める気持ちが強いのです。それらの希望を満たす為には、大きな開口部や柱の無い広い空間が必要となり、耐力壁がバランス良く数多く取り難いことにならざるを得ません。耐震性と居住性の2つの条件を両立する事は設計者にとって常に大きなテーマと言えます。

 私の場合、木造住宅を計画する時には、概略のプランをしている段階で、耐震計画も平行して行うようにしています。それは、「間取り=軸組(構造)」だからです。プランが決まった後での耐震計画は、どうしても無理が生じ、数字合わせの案になってしまいがちです。可能であれば、個室を1階に、大きな空間の部屋は2階に配置するというのも一つの方法ではないでしょうか。また、構造を混構造にして、水平力はコンクリートや鉄骨造で負担し、鉛直力のみを木造に負担させるという方法も良いと思います。

 このように、耐震性と居住性の良い住まいを工夫して計画すれば、住み手が建物に愛着を持ち、永く大切に、メンテナンスをしながら住むようになります。そうすれば、設計時の耐震性能も永く維持されるでしょう。建物の耐震性能は、完成直後は勿論、何十年経っても、建物が建っている限り維持することが最も重要なことですから。